《蝉が一匹、力無くジーと啼いた》

そもそも友だちの雅美さんから「気味の悪い手紙が父宛に届いた」と相談されたのがきっかけだったんです。雅美さんと手紙に書かれた所へ行くと、なんと頭が真っ黒焦げの死体を発見。更に、父静馬氏が雅美さんに「落とし前をつける」とメールに残し行方不明に。ここから私たちは静馬氏の行方を捜すことになります。その中で、26年前に起きた祖父重蔵氏の愛人“紀子”にまつわる事件と深い関わりがあることを突き止めます。26年前に一体何が?

00 プロローグ

「お父さんきたぁ~、おかえり~」
「ただいま」
「あなた、おかえりなさいませ」
「うん。おみやげ、お前の好きなショートケーキ」
「うわぁ、おっきい、食べていい?」
「まあ、ちょっと待ちなさい。あなた、夕飯になさいます、それともお風呂になさいますか」
「そうだな、腹が減ったから飯にするか」
「はい、わかりました、支度しますね」
「お母さんね、昨日からちゃんと筑前煮作って待ってたんだよ」
「そうか、お母さんのは美味しいからな」
「うん、お父さん、好きだもんね」